松(まつ)の物語
2025/09/30
今まで、日本を代表する木、檜、杉の物語を書いてきました。今回は、松の物語を書こうと思います。
松といえば、まず思い当たるのは「長寿」や「繁栄」の象徴です。常緑樹で一年中緑を絶やさないことから、不老長寿の木とされ、門松や正月飾りなど、おめでたい場面に欠かせない存在になりました。
日本の風景を思い浮かべると、海辺の防風林に並ぶ黒松や、寺社の庭にたたずむ立派な赤松が浮かびます。松はどんな場所でも力強く根を張り、厳しい環境に耐え抜く姿が美しく、私たちの心を打ちます。
材としての松は、とても粘り強く、梁や柱など大きな力がかかる部分に使われてきました。木目は力強く表情豊かで、塗装をしなくても独特の存在感があります。また、松の葉を煎じて薬にしたり、松脂を燃料にしたりと、昔の人々は余す所なく活用してきました。まさに「役に立つ木」でありながら、どこか気高い雰囲気を持つのが松の魅力です。
曲がりくねっても、荒波を受けても、しっかり大地に根を下ろす松。その姿は、家づくりにも通じる気がします。見た目の豪華さよりも、大切なのは、長く暮らしを支えられる強さ。その強さを松は、私たちに教えてくれているのではないでしょうか。...