和紙の優れた性質と、比類なき美しさ
2023/05/04
「障子」は元来、縁や部屋の間仕切りに立てる建具の総称で、不透光の建具と区別し、現在の障子は「明かり障子」と呼ばれていました。
明かり障子は鎌倉時代に発生して、足利義政が建てた京都銀閣寺の東求堂(とうぐどう)の障子が、現存する最古のものと言われています。
半透明の和紙を貼った障子は、日光の直射をさえぎり半分ほどの光を透過させ、やわらかく拡散させて、部屋全体を均等に明るくしてくれます。断熱性と調湿性に優れた和紙は、自然の空調機能をも持っています。細い木の桟と白い和紙の織りなす幾何学的な美しさは空間を引き締め、豊かな情感を醸し出します。
.,文豪谷崎潤一郎は、和紙の魅力についてこのように書いています'....「われわれは西洋紙に対すると、単なる実用品という以外に何の感じも起こらないけれども。唐紙や和紙の肌目を見ると、そこに一種の温かみを感じ、心が落ち着くようになる。(中略)西洋紙の肌は光線をはね返すような趣があるが、奉書や唐紙の肌は、柔らかい初雪の面のように、ふっくらと光線を中へ吸い取る。そうして手ざわりがしなやかであり、折っても畳んでも音を立てない。それは木の葉に触れているのと同じように物静かで、しっとりとしている」(出典 : 陰翳礼讃 谷崎潤一郎著 中央文庫)